【神ゲー】『ヘンタイ・プリズン』が伝えたもの【感想】(ネタバレあり)

■『ヘンタイ・プリズン』とは

ゲームブランド「Qruppo」の最新作。

 

露出狂のプリズン脱獄ADV

 

と銘打たれた今作は、発売前からかなりハードルが上がっていました。

というのも、同ブランドの前作である

『ぬきたし -抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?-」

が評価が高く、また世界観を同じくする続編(?)に位置付けられていたため、

「あの『ぬきたし』を超えることができるのか?」

という期待と不安が入り混じった状態だったのです。

 

まぁこのハードルを軽々と乗り越えるどころか、2,3つすっ飛ばして

ひねりを加えて着地してきたのが今作の『ヘンタイ・プリズン』なのですが。

 

ネタバレなしに、今作の概要をざっくり説明すると、

「露出の罪で捕まった主人公が、絶海の孤島に創設された「変態」ばかりを集めた監獄、『チューリップ・プリズン』へと収監され、この監獄を舞台に巻き起こる様々な難事件に立ち向かっていく物語」です。

 

前作からは信じられないぐらいダークな雰囲気で始まるのですが、

やはりくるっぽークオリティと言いますか、出てくるキャラクターたちが

みんな癖の強いキャラばかり。

笑いあり、涙ありは健在です。

 

「ぬきたし」と世界観を同じくしているとは言いましたが、

未プレイでも楽しめるでしょう。

しかし、この物語を真に理解するためには、

やはり「ぬきたし」のプレイは必須だと言わざるを得ません。

それは、設定や裏の意図を理解するという意味でもそうなのですが、

「Qruppo」がゲーム内で一貫して提示している、

「性」についてテーマがあるからです。

 

逆に「ぬきたし」はプレイしているけれど、「ヘンプリ」が未プレイならば、

今すぐプレイすべきです。絶対に楽しめます。頼むから買ってくれ。

 

 

「下ネタに抵抗がないなら絶対にプレイすべき!」

と声を大にして言いたいですが、今作は性犯罪がメインになっているため、

「ぬきたし」よりも笑えない可能性があり、こればっかりは

「体験版をプレイしてみて判断して欲しい」としか言えないのです。

 

qruppo.com

体験版は公式サイトからDLできます。

 

アダルトゲームだからこそできる表現と伝えられるものが、

この作品には確かにあると思います。

 

以下、各ヒロインのルートやキャラクターについて

語っていこうと思います。

 

  ―ここから先、ネタバレ注意!―(ぬきたし1,2に関しても)

 

 

 

■各ヒロインルートの感想

私はノア→妙花→千咲都の順で攻略しました。

体験版プレイ時では、ノアが一番好きだったので。

千咲都を最後にしたのは、単純に一番メインヒロインっぽい扱いだったので、

最後に攻略した方がすっきりするかな?ぐらいの考えでした。

 

当初の私の予想はいい意味で大きく裏切られましたが、

ルート攻略するたびに好きなキャラがころころ変わってしまい

情緒不安定になるかと思ったゾ・・・。

 

全てのヒロイン攻略後のグランドルートが解放となりますが、

まさかあの人が最後に・・・。

 

では、攻略順に感想を書いていきます。

 

●「紅林ノア」ルート

 

ソフりんとの繋がりはOPの演出や体験版の時点で想定内でしたが、

ここまで話が重い姉妹だとは思いませんでした。

「Qruppo」的に、ノアの姉に対する同性愛でも描くのかな?と思ってたら、

家族への重すぎる親愛だったというオチ。

 

順当に脱獄するENDかと思いきや、脱獄失敗からが本番。

2人の看守長を打倒するルートとなるわけですが、

このルートでグランドルートに必要な伏線がふんだんに散りばめられていたり。

 

「嵐の中でもラーメン食いに船を出すヤバい奴」の話が、あからさまに

前作「ぬきたし」ヒロインである畔美岬を髣髴とさせますが、

まさかグランドルートの伏線だとは思わなかった。

 

やややけくそ気味な解決法となりましたが、

制約が多すぎるので仕方ない気もしますね。

夕顔・我妻どちらも敵対したままだと、警備隊は全て敵で、

受刑者の大半は我妻からの洗脳済み。(詳細は他ルート参照)

この勢力に対抗する手立てを考案した時点で十分と言えるでしょう。

お姉ちゃんが活躍する展開も胸熱でした。

 

ノア

「愛を伝えるために、姉への想いを、一文字一文字に積年の情をたっぷり込めて、

一枚の紙をお姉ちゃんで埋め尽くすんです」

 

ソフりんを追い詰めてしまったノアの愛情。

手紙いっぱいに「お姉ちゃん」とだけ書かれたおぞましいものは、初見ではまさに

サイコパスな印象を抱かせますが、

ラストのソフりんからの手紙が、このマイナスイメージを一気に昇華させる流れが

あまりにも綺麗すぎて感動しました。

 

ラストの一枚絵は髪を下ろしたノアですが、

プリズンを出た後に、プリズンで拾った髪ゴムを解くことが、

そのままプリズンからの解放を意味しているんですよね。

そういう細かい描写ホント好き。

 

千咲都の「いい気味ねぇ~」がお気に入り。

朝食に卵かけご飯食べるときに「いい黄身ねぇ~」って言っちゃう(病気)。

 

個人的にこのルートの一番のポイントは、全ルート通して唯一、

ソフりんが救われていることだと思います。

 

全てが終わった後の内藤(パンツァーンホォー)との会話で、

自分のやってきたことが、無駄じゃなかったんだとようやくわかるシーン。

もちろん、グランドルートでもソフりんは幸せにやっていっているのでしょうが、

刑務官として成し遂げたことに対して報われている描写は、ここにしかありません。

私はこのシーンが大好きで、続編でソフりんルートを期待せずにはいられないのです。

 

内藤の演技、クッッッソ好き。

 

●「波多江妙花」ルート

 

全体を通して、妙花は個別ルートやる前と後で

一番印象が変わったキャラです。

 

ヒロインの個別ルートの中だと一番面白かったです。

組長として幾度となく土壇場を切り抜けてきた妙花と、

サイコパスだけど製薬会社のご令嬢として頭のキレるシスターとの読み合いは、

手に汗握ります。

薬物「H」の正体、電子ドラッグとしての扱い方や夕顔との共闘など、

もはや受刑者としての立場はどこへ行ったのかと思う大立ち回り。

 

このルートで印象的なのは、やはり波多江組の4人です。

三羽烏と妙花とのやり取りは、柊一郎が少しずつ「他人に対する思いやり」を

意識しだすきっかけにもなっているのでしょう。

グランドルートクリア後に改めて考えてみれば、

波多江組という「家族」として互いを大切に思う関係性は、

プチネグレクト気味だった柊一郎との対比的な意味合いもあったのかも。

 

そしてなんといっても決戦時ラストの小沢ですよ。

「波多江の強肩」をあんな綺麗に活用するオチ思いつくか?

シナリオライターは波多江組の幹部かもしれない。

 

ヒロインとしての妙花は、組長ではなく一人の少女としての弱さを見せる

のですが、やっぱりこのギャップが刺さるんですよね。

組長めちゃかわいいと言っても過言ではありません。

「満期出所はヤクザの花」

と妙花が言っていた通り、本当に満期出所して再会するエンドは

素直にうまいなぁと。

10年の間にプリズンでは色々とあったみたいですが、

夕顔と千咲都が「トップをねらえ!」みたいな関係になってる話が

めちゃくちゃ気になるので、その辺りぜひ詳しく。

しかも山岸刑務官とめちゃくちゃ仲良くなってるので、

これは姫瑠ルートの伏線なのでは・・・?(深読み)

 

ネタとしても、ZEN☆GI☆OHのネタの細かさは笑うどころか感心するレベル。

マスターデュエルが流行ってる今読むと、高速で環境が変化していっている

ことが理解できて謎の感動。「パコードトーカー」の語呂の良さ好き。

 

どさくさに紛れて花丸凛が、糺川礼の「鶴翼の陣、一斉掃射!」を

言って悦に入ってるのは礼先輩推しとしては中々に興奮しました。

水野さん(礼先輩の中の人)めっちゃ喜んでそう。

 

●「千咲都」(黒鐘伊栖未)ルート

 

分かってはいましたが、千咲都の過去が重すぎて、

他2人のヒロインのルートで笑ってたのがウソみたいな内容でした。

 

チューリップ・プリズンについて深く知ることになるルートですが、

ネタ要素もほどほどに、ただただ千咲都を救い出すためのおはなしです。

 

我妻看守長との共同戦線は、

妙花のルートを先にやっていたのでシスターの思惑が分かった上で

読み進めることができてすんなり内容が頭に入ってきました。

もちろん、裏では洗脳が進んでいたことや、結局組長が

「H」の真相にたどり着けないことを考えると、

全てが丸く収まったわけではないのですが、

千咲都が幸せになるために全てを費やしたことを考えれば、

あくまでも千咲都・・・・・・黒鐘伊栖未を救う物語だと思えば、

この終わり方で問題はないのかもしれません。

 

このルートでは脱獄も出所もせず、島の中で幸せになるという

終わり方になりましたが、それをまさかパコルで叶えてしまうとは。

 

賭博のシーンは展開が練り上げられてて面白かったですね。

心理学を専攻していたはずの夕顔が、賭博を介しての

心理戦で負けてしまうというのは、何とも皮肉が効いていました。

 

伊栖未の髪が黒から白になってしまいましたが、

本編内だと過度なストレスによるものだと説明されています。

深読みすると、柊一郎によって救われたことにより、

右眼の「闇」から解放された、という暗喩のような気もします。

流石に深読みかもしれませんが。

でも伊栖未は黒髪の方が可愛いと思うのです('ω')

 

●グランドルート(湊柊一郎ルート)

 

各ヒロインのルートを全て詰め込みながら、

黒幕である水城所長と対決し、そして脱獄するルート。

 

このルートの根幹は、劇中で何度も言われている通り、

各ヒロインを救うことではない。

 

最も重要なのは、ゲームを作ること。

 

千咲都がシナリオを書いてくれるように夕顔を看守長の座か引きずりおろし、

妙花がイラストを描いてくれるように我妻と薬物「H」をぶっ潰し、

ノアがプログラムを組んでくれるようにソフりんと和解させる。

 

なので、地下で幸せになることも、満期出所することも、脱獄する必要もない。

これは柊一郎が一番やりたいことを優先しているということです。

 

――っと、言うのは容易いがこれをシナリオとしてまとめ上げるライターの

手腕には感服する。

しかも柊一郎たちが作っているゲームの内容とシンクロしながら話が進んでいる。

各ルートの要素に破綻もなく、散りばめられていた脱獄に必要な要素を

全て積み上げて来て、ついに答えが導き出されるその瞬間には、

得も言われぬカタルシスが得られるのです。

 

さて、ここでもう一つ重要な存在がアマツくんである。

 

解離性同一性障害の副人格であるアマツくん。

最初、各ヒロインのルートでアマツくんが消えてしまった理由が、

ゲーム作りよりも大切なこと(ヒロインたちへの愛情)を見つけたから

だと思っていました。

 

柊一郎が、本当の意味で愛に目覚めたということなのだと。

これは言い換えると、柊一郎が「大人になった」ということ。

他者を思いやることができるようになったということで。

 

処刑前の絵里子先生との会話で、ここがはっきりします。

些細なニュアンスの違いかもしれませんが、私の中ですとんと腑に落ちました。

 

ただ、最も信頼できる大人に言われたことを守っていた。

ただそれだけの、純粋な子どもが柊一郎なのだとわかったあのシーンで、

私はボロボロ泣きました。

絵里子先生の気持ちを察すると、あまりにも重すぎる・・・・・・。

 

アマツくんのおかげで、柊一郎という人間性に深みが増した。

本編のセリフを借りれば、

「全裸で露出が趣味の主人公のゲームなんて誰がやるんだ」

って思っていたらとんでもない。愛すべき一人の人間でした。

 

さて。ここでもう一人。

 

そんな柊一郎の背中を押してくれた男、小沢について。

 

ぶっちゃけメインヒロインでしょ、こいつ。マジで大好きです。

堂々と愛の告白を叫んで消えていく様は、完全にヒロイン。

かっこよすぎる。

 

思えば、柊一郎にとってアマツくん以外で初めてできた友達であり、

脱獄後も柊一郎のためにご飯を作ってくれるパパのような存在でもあり、

本当こいつ愛されすぎでしょ。

Qruppoは男キャラの扱いが上手すぎて大好きなんですよ。

男キャラがいいエロゲは神ゲーの法則(断言)。

アフターがあったら、小沢が家族と一緒に幸せに暮らしてる描写も欲しいですね。

 

 

「柊一郎が大人になる物語」とも言えるグランドルートでは、

今まで登場した全ての登場人物が彼に味方してくれます。

この展開がまた王道で激熱で、彼が築いてきた他者との繋がりなのだと

明示してくれている部分でもあります。

他者を何とも思って来なかった彼が、みんなに助けられるというのは、

「あったかいなぁ~」って思うんですよね(語彙力の不足)。

 

ファンサービス程度に思ってた、NLNSのメンバーを思わせる伏線が、

まさか最後の最後で本当に登場してくれるとは思いませんでした。

しかも全員。

 

「ぬきたし2」のアフターで、会社を設立していたNLNSが、

まさか本当に来てくれるとは。

リストバンドとクッソダサイTシャツが最高なんだよなぁ。

淳之介のTシャツがシャケだから、柊一郎はいくらて。

 

少なくとも10年ほど経ってることを考えると、

みんな演技がちょっと大人びてて感動しました。

 

閑話休題

 

結果として、戦わずに逃げることで解決したわけですが、

釘谷さんにスポットが当たるのは予想外でした。

 

裏できっと繋がってるだろうな、という伏線はそこかしこに

あったのでわかりやすかったのですが、

柊一郎同様、居場所を求め彷徨う人として描かれ、

より柊一郎の旅立ちを印象付けています。

 

子どもだからこそ、自由でなんでもできた柊一郎が大人になっていったことと、

大人だからこそ動けずにいた釘谷さんが、柊一郎に惹かれていくこと。

この関係性が、最後の最後に効いてくるシナリオ。

本当に美しい終わり方でした。

 

「性」犯罪から始まり、「生」きることについて問いかけるような。

そんな素晴らしい作品でした。

 

ちなみに、柊一郎が植えていたチューリップ。

 

ピンク色のチューリップの花言葉は、

「愛情の芽生え」「博愛」「思いやり」

 

ベタですけど、やっぱりいいですね!

 

 

以下、グランドルートのチャプター名で調べてみたもの。

 

・schadenfreude = 他人の不幸を喜ぶ 

(夕顔から伊栖未に対して)

 

・Dominus vobiscumラテン語:「主はあなたと一緒にいる」) 

(我妻から柊一郎に対して?)

 

・silly walk = 愚行

(自身が犠牲になった柊一郎のこと)

 

・ganser syndrome = ガンサー症候群  

拘禁下の心因反応としてみられることの多いヒステリー性精神症状。

(処刑前の柊一郎)

 

・just now looking for a paradise in this world

=この世の楽園を求めて

(青藍島での生活)

 

・redemption = 贖罪

(5-10が柊一郎、5-12が釘谷さん)

 

・「夏来たるらし、白妙の」

クライマックス。

釘谷さんが、ラーレへとやってくるシーン。

持統天皇の和歌が由来で、原文は――

 

――春過ぎて 夏来るらし 白たへの 衣ほしたり 天の香具山

 

これはもう、そのまんまですね。

常夏の島に、白いYシャツの人がやってきた。それだけです。

まさか、エロゲ―をプレイしてて

最後の最後で男性キャラの一枚絵で泣かされるなんて思いませんでした。

 

何度も言いますが、本当に素晴らしい作品でした。

プレイで来て幸せです。ありがとう、Qruppo。

OST楽しみにしてます。

 

 

――以下はなんの根拠もない深読みと願望です。――

 

■「ぬきたし」からの繋がり

 

ヘンプリ本編でちょこちょこ言及されてますが、

恐らくぬきたし2のラストから5~10年ほど経過しているみたいです。

(水城所長が青藍島を規制し始めたのが5年前って言ってた気がする。

 ・・・・・・うろ覚えです)

 

ヘンプリのグランドルートのアフターで、伊栖未が文乃の子どもを

抱っこしていることを考えると、やはり文乃アフターが正史だと

言えるでしょう。

 

水城所長が、青藍島を規制したのがおおよそ5年前らしいので、

この間に何かあったんだろうなぁと。

あくまで本島に情報が入ってこないようにしたのか、

それとも青藍島に何らかの働きかけをしていたのか。

 

個人的には、Qruppoの上げた動画、「うたのザ・ベスト19」で、

スス子の通信があまりにも不穏すぎて、この時に何か青藍島に対して

あったんじゃないか、という妄想をしています。

 

www.youtube.com

 

発売から1年以上前の話なので、あくまで適当に用意してただけで、ボツになった

設定かもしれないですけど。

 

文乃アフターのラストで、桐香たちが話していた内容、

「SHOの権利を奪おうとしているやつがいる」

という部分も、今回のヘンプリの話から、青藍島という存在が周囲の

人間に快く思われていないことは確かなので、何かあってもおかしくないなぁと

妄想したり。

 

これらは全て私の妄想なので、今後何かしらQruppoが新作を出してくれるので

あれば、そういった内容が関わってきたりしたら面白いなぁ、という独り言。

 

■まとめ

「ヘンタイ・プリズン」という神ゲーに、そして「ぬきたし」含めた

この世界観にまだまだ触れていたいので、ボツシナリオでもドラマCDでも

アペンドでもいいので、どんどん供給して欲しいですね。

 

追加のシーンが来るのは確定しているので、

今はそれを楽しみに生きていこうと思います。

 

以上、長くなりましたが、感想は終了となります。

 

ご覧いただき、ありがとうございました。